ボロトイレに巣食うGを駆逐した話【ゴキブリワンプッシュ】

地球の自転と公転により太陽光線を大量に受ける時期。夏。



この季節の主役は、ビーチで筋肉自慢をしているEXILE風のウェイ男ではなく、浴衣姿がよく似あう清楚美人でもなく、白球を追いかける高校球児でももちろんない。ゴキブリですよね。




3億年以上も前からこの地球上に君臨する彼ら。その彼らからしたら、ほんの20万年程の空疎な歴史しかない我々人類は、生まれたばかりの赤ちゃんぼーぼーであることは紛れもない事実であります。




言うならば彼らは地球上の生態系において大先輩にあたる。我々人類はそんな彼らをリスペクトし、敬い、称賛し、すれ違う時には挨拶をし、酔心し、盃を交わし、叔父貴と呼び、その存在を崇め奉る事はない。決して、ない。




その理由は、ひとえにゴキブリのキモさが原因である。




3億年の歴史すら無に帰すほどの常軌を逸したキモさ。
もはやゴキブリという字面でキモい。「ゴキ」の時点でかなりのキモさだが、その後にまさか「ブリ」を持ってくる。キモさに余念が無い。その名前は絶妙に不快なハーモニーとなって鼓膜を揺らす。もし、ゴキの後が「ぽよ」だったり「ょぱ」だったとしたら、今よりは多少親しみをもたれる存在になっていたかもしれない。「ゴキぽよ」「ゴキょぱ」




だがその名前以上に嫌悪される大きな原因がそのみてくれだ。
不気味な光沢を放つキューティクル。触覚のうにょうにょ。時速300Kmを超える素早さ。顔面ほぼプレデター。デフォルメされた「いらすとや」の画像ですらキモさが隠しきれていないのは脱帽である。もはやそのキモさ名人級。圧倒的実力でタイトルを総ナメにしている。他の追随を許さないそのキモさは、キモいという概念を超越し、人類にとって畏怖の対象とすらなっている。もしゴキブリに好意的な方がいたら本当にごめんなさい。




そして今年もまた、ゴキブリが猛威を振るう季節、「夏」が来ていることに恐れおののいている。私の住む沖縄は高温多湿でゴキブリが繁殖しやすく、今年もエンカウントを避けることは極めて困難だ。沖縄にとってゴキブリはもはや夏の季語なのだ。




今年も奴らは帰ってくる。それだけは分かっている。
敵陣の馬煙が見えているのに迎え撃つ準備をしないわけにはいかない。「ゴキブリ 駆逐 2020」とネットで検索をかける。
不意にゴキブリのリアル画像を開いては鳥肌を立たせつつも、私はタイトルにある最強ウェポンを見つけてしまう…


「フマキラー ゴキブリ 駆除 殺虫剤 スプレー ワンプッシュ プロプラス 約80回分」

「わんぷっしゅ♡」だなんて一見可愛いらしい名前の響きだが騙されてはいけない。
このアイテムが現存する対ゴキブリの最強殺虫アイテムだと思われる。根拠はamazonのレビューだ。下記は一部抜粋したものだが是非皆さんにも見てほしい。







素晴らしい…素晴らしいぞ…!!
もはやネタ状態のレビューだが、効き目に関しては皆口を揃えて言う「地獄級」。
人を疑うことを知らないとっちゃん坊やな私は迷うことなく商品をカートに入れ、楽天カード払いで精算を済ませる。




数日後、amazonから商品が届いた。
胸を膨らませ、段ボールから「わんぷっしゅ♡」を取り出し、アパートの自室で使おうと思ったが、ふと一つの考えが浮かび、やめた。



「どうせ使うなら大量のゴキブリを駆逐したい…!」






私の職場には敷地内の離れにひっそりと佇む屋外トイレがある。
令和の時代とは思えない程のボロトイレ。その為そのボロさが結界となり人を寄せ付けず、そのトイレには常に静寂が保たれている。




職場でもよおす時は、私は決まってそこでうんこをする。
周囲に誰かがいると便意に影響が出るシャイなアナルを持つ私としては、結界の張られたそのボロトイレはありがたい聖域なのである。




しかし、このシャイアナラー以外にもそのトイレを常用している者がいる。それが彼ら、ゴキブリたちだ。




急な便意をもよおし駆け込んだところ、トイレ内を散歩中のゴキブリに遭遇し奇声を上げたのは一度ではない。
今となってはそこでうんこをする時は、事前にトイレ内をFBIばりのクリアリングをしてから用を足すようにしている。もし、うんこ時の身動きできない状態で奇襲攻撃を受けたら私は泣いてしまうかもしれない。うんこを垂れ流しながら号泣しているアラサー男性はかなりキツイ。職場での排泄は命がけのサバイバルなのだ…。




だが、そんなゴキブリに怯えた日々ともついに決別することができる。
そう、私はその職場のボロトイレでワンプッシュの発射実験を行うことを決めた。
これはもはやただの防虫作業ではない。ゴキブリの生命力と、人類の英知との決戦だ。さあ、どちらが真の地球の支配者か決めようじゃないか…。




20時。タイムカードを押したマッドサイエンティストは屋外トイレに向かう。右手にはワンプッシュaka大量破壊兵器を握りしめ。
トイレ内はこれから起きる惨劇のことなどつゆ知らず、いつものように閑散としていた。




私は壁のひび割れ、水タンクの裏、排水溝の中、彼らの導線となるあらゆる場所へ容赦なくプッシュプッシュandプッシュ。夜分ボロトイレで何かに取り憑かれたように殺虫スプレーを振りまいている不気味な男を見かけたら十中八九、私だ。見かけてもどうか通報しないでほしい。




翌朝。私がいつもより早めに出勤したのは、決して仕事熱心なためではない。
他の職員にGの死体を先に発見、処理されないためだ。本当にレビューにあるような地獄絵図になったら、それを見てしまう職員が可哀そうだからというのもある。



このドアを開け大量のGの死体を確認できたら、その時が人類の勝利だ。
首を切っても簡単に死なないGを大量に殺せる品物なのだとしたら、ワンプッシュの毒性は相当に強力なのだろう。
きっと体中の自由が奪われ、息もできず、もがき苦しみ、生き地獄の中人間を呪って死んでいったかもしれない。
フマキラーが人類サイドで本当に良かった。

いざドアを開けようとした時、ふと思った。



いくらGといえど、これほど惨い仕打ちをしてよかったのだろうか…?
ただ姿形が気に入らないという理由だけで皆殺しにしていいのだろうか…? それほどまでに私はGが憎いのだろうか?




もし、今回の無慈悲とも言える完膚なきまでのプッシュに対し、その必要性があったのか論理的な答えを求められたらその返答に窮する。
彼らがテリトリーに侵入してきたから? いや、元々彼らの住んでいた森を奪ったのは我々人間ではないのか……?


そして人間はゴキブリを殺すが、ゴキブリが人間を殺すことはない。少なくとも私は肉親を彼らに殺されたことはないのだ。




この感じ。覚えがある。
あぁ、ホーディだ。ワンピースのホーディ・ジョーンズ。

魚人島のホオジロザメの魚人。
魚人こそが至高の種族と信じる彼は、人間を極度に嫌うレイシストだ。
だがその人間を忌み嫌う性格は、ホーディ自身が人間から直接迫害を受けて形成されたわけではなく、人間を嫌う魚人の先人達による洗脳教育によって作られた。ホーディはいわば環境が生んだモンスターなのだ。




「人間は一体お前に何をした!?」という問いに、「なにも」と返したこのホーディの言葉に差別が生まれる原因の根深さの一端を知った全国のジャンプキッズは震えあがったのだ。




差別と言えば、最近読んだ本でこんな本がある。



イギリスで暮らす日本生まれの母親(著者)とイギリスで生まれた息子の日常を記した読み物。小説というよりはエッセイと言った方がいいかもしれない。




タイトルからも読み取れるように、人種差別が大きなテーマとして書かれている。
移民も多いイギリスにおいて、その多様性によって生じる摩擦が差別となりそれが教育という形で継承され、カーストが作られていく。




著書の中にはエンパシーという言葉が出てくる。
エンパシーとは、「自分がその人の立場だったらどうだろうと想像することによって誰かの感情や経験を分かち合う能力」とされている。




混同されがちな言葉でシンパシーという言葉があるが、こちらは相手に対して可哀そうだと思うような、受動的かつ感情的な状態のことであり、相手の立場に立つ想像力を有するエンパシーとは異なるものである。エンパシーはもっと能動的で知的作業といえるのだ。




今後の日本は移民もそうだがさらに多様化が進む。様々な立場・アイデンティティーを持った人が増える。その分差別問題がさらに浮き彫りとなるだろう。その時、自分と違う立場の人を「異なる者」とし、簡単に分け隔てるのではなく、一度相手の立場を想像し、エンパシーを持って考えてみることが大事になってくるのかもしれない。


































(ゴキブリは3匹死んでいました)

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